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サイト『七月の樹懶』の話と、更新履歴を主に。
300字SS『彼は彼方に』

 少しだけ、早起きをした朝。
 しっとりとした、白くけぶる屋外へ歩み出した時、思わず足を止めてしまった。
 霧の中でもわかる、紫の髪。同じ色の瞳が空を見上げ、ぼんやりと佇んでいる。
 その姿が今にもかき消えそうに思えて、慌てて名を呼べば、彼は弾かれたようにこちらを向き、柔らかく微笑んだ。
「どうしたんだ」
「貴方が、一人で消えそうだったから」
 胸に迫る不安を口にすれば、紫の眉尻が困ったように垂れる。
「俺はどこへも行かないよ。君を置き去りになんて、しない」
 彼の言葉の力に嘘は感じられなくて、「そうね」と曖昧に微笑み返す。
 
 その時はまだ、彼が本当に消えるなんて思ってもいなかった。
 白の霧ではなく、赤の炎の向こうへ、なんて。

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第48回Twitter300字SS様参加作品。お題『霧』。
またこうやって不穏を振り撒く!! とツッ込まれそうですが、
 
……………まだ子世代でこんなロマンス浮かばなかったんですよ……………。
 
という訳で、親世代主人公二人の、まだ何も知らなかった頃の、一幕でした。

 

posted by たつみ | 21:04 | 小話 | - | - |
サイトプチ改装しました。
サイトを改装しました。
と言っても、色彩や体裁が変わらないので、どこが変わったんじゃ、というかんじですが、具体的に言うと、タブレットやスマホで見た時に、サイトがそのまま小さく表示されるのではなく、画面に合わせて表示範囲が変わるように……レスポンシブって言うのでしょうか、それです。

もう何年も前から考えていたのですが、なかなかふんぎりつかず、ずるずる来ていました。
が、FO中巻入稿を終えてフリーダムな気持ちになった途端、なんだか急にやる気が出て、
「とりあえず表の体裁だけでも!」
と、テンプレートを借りてきて、ウリャーーーと突貫工事しました。

まだリンクや表示がおかしいところがあるかもしれません。実際、リンクページがタブレットやスマホで思い通りに表示されなくて、少しいじってみたのですが解決しておりません。これはおいおいなんとか打開策を見つけたいところです。お見苦しくてすみません。
そして、肝心要の小説ページがまだ対応しておりません。

だって何百ページあるんだってば!!!??

という嘆きは置いといて、こちらも順次テンプレート対応させていきたいと思いますので、「サイトじゃ読みづらいわ!!」という方は、なろうやカクヨムをご利用くださると幸いです。

……って、あ。
一番重要な事を言い忘れていました。
独自ドメインというのを取り、SSLに対応しました。ブラウザで見ていると、「保護されていない通信」と表示されるのが気になりまして。

https://tatsumi-sloth.club/

が新アドレスになります。
これまでの発行物は直せませんが、今後の発行物では、このURLを記載してゆこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

 
posted by たつみ | 20:54 | 更新履歴 | - | - |
300字SS『アルテアの魔女、黒の死神にチョコを贈る』

「イシャナでは、好きな相手にチョコレートを送る日だそうですね」

 そう言ってあいつが渡してきたのは、小箱に入ったトリュフチョコレート。少し不揃いなのは、こいつの手作りだからだろう。

 一粒つまんで、口に放り込む。たちまち、ほのかな苦味と、強すぎない甘味が口内に広がった。

「美味い」

 素直に感想を述べれば、表情がぱっと輝き、花の蕾がほころぶように笑みが広がる。

「おい、そんな顔するな。食っちまうぞ」

 その言葉の意味は理解しなかったらしく、若草色の瞳がきょとんとまたたいた。

 ……だから、そういう顔をするなと。

 

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第47回Twitter300字SS様参加作品。お題『食べる』。

思いっきり季節外れですが、もしかしたらアルテア世界のバレンタインは2月ではないかもしれないので、お題優先で突っ込みました。

物理本の最終巻を発行してから、今月で丁度一年ですが、足かけ5年みっちり付き合ってきただけあって、エレ達は今も描きやすいです。

posted by たつみ | 21:07 | 小話 | - | - |
サイト更新・2018/09/27。

+『フォルティス・オディウム』シズナ編10章4、エピローグを更新しました。


……という訳で、年始から連載してきたFO親世代編が、投稿サイトより少し早く、完結いたしました。
物理本では5月に既に結果が出ているとはいえ、Webのみでご覧くださっている方もいらっしゃると思うので、この結末には、「ハ!!!??」となる事と思います。実際私もこれ、自分が読者で、ここで一旦切られて続きはもう少し後ね! って言われたら、全く同じ反応をします。
かなりきついと思いますが、自分ではラストシーンまでわかっているので、「しばらくお待ちください」と申すしか無いのが現状です。
あと、方々からさんざん「クソ行政」と呼ばれたクソ行政には、しっかり因果応報をしましたので、「ゲスは滅びよ!」という自分の信念は曲げていないと思います。多分!(多分)

とにかく「失われてゆく物語」の親世代でしたが、子世代は「取り戻す為の物語」の通り、希望へ向かって皆で全力疾走の後大ジャンプをする話になります。はずです。
シズナとアルダの娘エクリュと、親世代で生き残ったあのあたり、そして子世代の新たな仲間達の戦いは、11月28日、サイト17周年に開始予定です。
墜ちたら後は上がってゆくだけ……までに波乱万丈がありますが、光の中で綺麗な花を見出す為に、エクリュ達が頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

posted by たつみ | 21:46 | 更新履歴 | - | - |
300字SS『あなたの生まれたこの季節に』

「焼きました」

「何を?」

「ケーキを。でも」

 薄い唇を屈辱に歪ませて、彼女は、蚊の鳴くような声で告げた。

「失敗しました」

 恐らく、この季節らしく栗と芋を使ったのだろうパウンドケーキ……を目指したらしき物体は、元が何だったのかわからないくらいに真っ黒な塊となっている。

「ごめん。素直に母さんに作ってもらえば良かったわ」

 そう言ってしょんぼりする頭をぽんぽんと軽く叩き、黒い物体を手にして、かじりつく。正直、炭の味しかしないが、幼い彼女が自分の為に作ってくれた、それだけで愛しさが募る。

「練習だと思えばいいんだよ。次を楽しみにしてる」

 口の中をじゃりじゃり言わせつつ笑いかければ、彼女の表情が、ぱっと明るく輝いた。

 

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第46回Twitter300字SS様参加作品。お題『秋』。

『フォルティス・オディウム』番外編、主役二人が、まだ何も知らずに幸せだった頃の話です。

posted by たつみ | 21:00 | 小話 | - | - |
300字SS『帰る場所など』

「おかえり」

 子供の頃、遊んだ後に家路を辿ると、そう言ってくれた両親は、流行り病で逝きました。

「おかえりなさい、姉さん」

 たまの休暇で顔を見せると、そう出迎えてくれた妹は、行方知れずになりました。

 

 そして、今。

 旅路を共にしている勇者のあの人は、野営の夕方、わたしが夕飯の食材を得て戻ると、

「おかえりなさい」

 と、柔らかい笑顔を向けてくれます。

 

 彼女は知らない。

 わたしが、彼女にそんな事を言ってもらえる資格など無い事を。

 わたしが、この胸に秘める感情の刃を。

 何も知らないままの彼女に、「おかえり」と言って欲しいわたしと、彼女に全てを突き付けて、この信頼を塵に還したい衝動に駆られるわたしが、延々と戦っているのです。

 

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第45回Twitter300字SS様参加作品。お題『帰る』。

既にWebでも真相が公開されている範囲なので、そろそろ良いだろうと思い、主人公達以外の事も、描いてみました。 この話の主役と、「妹」については、本編終了後の番外編で、もう少しだけ、掘り下げたいと思っております。(なお番外編は白紙(プロット書き途中)です)

posted by たつみ | 21:16 | 小話 | - | - |
第7回Text-Revolutions アフターレポート

ご大層なタイトルをつけて始めましたが、何てことは無く、単に私がブログを動かしたかったのと、今回誕生日とモロかぶりだったので、残りの命数数えたらもう二度と無いだろうから、記念に文章として残しておこう、という意図で記した、テキレボレポです。

特に面白おかしく書ける訳ではありませんが、ほんともう、イベント直参当日に誕生日だったのが空前絶後なので、覚えている限りの事を、書き記します。

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posted by たつみ | 22:04 | 雑記 | - | - |
300字SS『宵空から降る』

『死した人は、母なる大地に身体が還り、父なる空にその魂を抱かれて、星となって子孫を見守り続けるの』

 いつか妻が話してくれた、西方のならわし。

 その話に則るならば、既にこの世を去った自分の両親も、身体は土に還り、無限の天空のどこかで、自分達を見守ってくれているのだろう。

 草の上に寝転がって、無数の星が瞬く宵空を見上げていた時、

「あ」

 傍らの孫が、無邪気に声をあげた。

「ながれぼしー」

『流星は、生まれ変わり』

 だから、流れ星の後には、再び地上に命が芽吹くという。

 そしてその通り。

「産まれたわよ」

 妻が微笑みながらゆっくりと歩いてきて、孫の赤銀髪をくしゃりと撫でた。

「これで貴女もおねえちゃんね、エレ」

 

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第43回Twitter300字SS様参加作品。お題『空』。

 

「もう書かないだろうと思います」と言ったのを覆して、『アルテアの魔女』より、超番外編になります。

物理本5、6巻にあたる、続編を読まれていると、ニヤリとする仕様です。というか、そうでないと混乱を招く仕様になっております。すいません。

久しぶりの『フォルティス・オディウム』以外の番外編、楽しかったです。

posted by たつみ | 21:19 | 小話 | - | - |
300字SS『彼の望みは』

 春が来ると、白詰草が咲く草原で、王冠を編んだ。
 大好きな彼の紫の髪に、白と緑の冠を載せて、ごっこ遊び。
「王様、ご所望のものはありますか?」
 少し芝居がかった口調で、恭しく胸に手を当てて訊ねれば。
「君だよ」
 笑いを含んだ柔らかい声が耳朶を叩いて、腕が伸ばされる。
「ずっと一緒にいよう」
「お望みのままに」
 目一杯の笑みを返して身を委ねれば、温もりが包み込んでくれた。

 今、目の前に彼はいない。
「ご所望のものはありますか?」
 同じ問いを浮かばせて、じっと虚空を睨みつける。
「魔王様」

 今の彼が望むのは、世界か、あるいは、私の命か。
 あの頃の遊びではない問いを、いつか投げかける事になるのだろう。

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第42回Twitter300字SS様参加作品。お題『遊ぶ』。

本日、物理本上巻がコミティアで初頒布となりました『フォルティス・オディウム』超番外編です。
去年あたりに、主人公視点で似たような話を一本書きましたが、あの話のネタバレをもっと突き詰めると、こういう事になります。
彼女達の運命については、物理本、あるいはこの先のWeb連載をよろしくお願いいたします。

posted by たつみ | 21:39 | 小話 | - | - |
300字SS『引き継ぎ』

 銃を、渡された。

「これが、隊長としてのお前の武器だ」

 王国最新式のリボルバー型。銀色の輝きは、ずしりと手に重い。

「さあ、新しい隊長に、最初の任務だ」

 僕を跡継ぎにする事しか頭に無くて、親らしい事を何ひとつしてくれなかった育ての親が、低い声で告げる。

「『先代を始末しろ』」

 しばらくの咀嚼の後、意味するところを理解して、驚きに目をみはれば、いつもどこか投げやりだった黒の瞳に、はっきりとした覚悟の光が宿っている。

「この腐れた国の、代々の儀式だ」

 その言葉にうなずき、真新しい銃口を真正面に立つ男の額に突き付ける。見上げる形になるのは、遂に彼に身長が追いつけなかった証拠だ。

「生きろよ」

 その笑顔に向けて、引鉄を、

 

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第41回Twitter300字SS様参加作品。お題『新しい』。

 

最新作『フォルティス・オディウム』より、第2ヒーロー・ミサクの超番外編です。

この話については、かなり後でもう少し詳しく言及する機会があればいいなと思います。

まずは春ティアでの本編上巻を、よろしくお願いいたします。(とダイマ)

posted by たつみ | 21:02 | 小話 | - | - |