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サイト『七月の樹懶』の話と、更新履歴を主に。
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300字SS『彼傘』
 水桶をひっくり返したかのような、突然の雨がやってきた。
 人々はそれぞれ、傘を広げたり鞄で頭を覆ったりして、家路を急ぐ。
 一時の雨宿り場所を求めて道を走っていると、ばさり、頭からかぶさる物が。色でわかる、黒い、彼の上着。
「傘にはならねえだろうが、それでしのげ」
 隣を走る彼が、赤い瞳をこちらに向ける。
「でも、そうするとあなたが」
「俺がこの程度で風邪引くか。お前に倒れられる方が迷惑だ」
 迷惑。その単語に、きゅっと心臓が痛みを覚えるけれど、彼なりに心配してくれているのだというのは、この半年で理解した。
 だから。
「……ありがとうございます」
 頬を染めてうつむきつつ返した言葉は、雨音で届かなかったかもしれないけれど。


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第33回Twitter300字SS様参加作品。お題『かさ』。

1回休み、をした後の『アルテアの魔女』超番外編です。
これで読み方は多分「ひがさ」です。(多分とは)
posted by たつみ | 21:12 | 小話 | - | - |